キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「冬城、一つ聞きますが――
どうしてイレイズが出たと分かったのですか?」

「……」


〝梗一くんが袖にナイフを仕込んでいる〟と知っている怜くんは「無駄だよ」と冷たい瞳を向ける。


「俺に脅しは通用しない」

「脅し? 私は話をしているだけですよ」

「……」


静かに、だけど鋭い視線をぶつけ合う二人。

先にそらしたのは、怜くんだった。


「二人が女の部屋から出て来たから、イレイズが来たと思った。それだけだよ」

「……」


それでは納得いかなかったのか、梗一くんは袖から手を抜かない。

だけど怜くんは、構わず先へ進んだ。


「どうしてこのタイミングで俺がここを通ったのかって聞きたそうだね?」

「お察しなら、ついでに答えてもらいましょうか」


ニッと口角を上げる梗一くんに、怜くんが少しだけ振り返る。

そして――
< 65 / 337 >

この作品をシェア

pagetop