キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ
ため息をつきながら頬をかく。
実は「総季家の悪口を言う人たちに遭遇しちゃう」のは、よくある光景で。
なぜ末女の未夢様はお車を使わず、使用人も控えず一人でウロウロされているのだ――と。
住人の間では、私は目の上のタンコブ扱い。
「でも、私が悪いわけじゃなくてですね……」
付き人がつかないのも、移動が車ではなく徒歩なのも――
私には全て「贅沢なもの」だから。
「未夢に手厚くして何になる。不要な金はかけるべきではない」と、家族が話しているのを聞いたことがある。
そう。
皆様なんとなくお察しの通り。
私は「総季の家族から」虐げられている。
「家族」と言っても、血のつながりがあるのはお母さまだけ。
お母さまとお父さまが再婚して、お兄さまとは兄妹になった。
だから、正しく言うと「お義兄さま」になる。