あの夜に焦がれる。
プロローグ
高校の時に仲良くしていた友達が死んだ。
その知らせを受けたのは僕が大学1年生になって初めて迎えた夏だった。
友達の土屋理央(つちや りお)は19歳という若さで人生に幕を閉じた。
お葬式が開かれることになり、友達として理央の両親に呼ばれた僕は理央の遺影をただ呆然と眺めていた。
なんて顔、してるんだよ。
僕は震える下唇をグッと嚙んだ。口の中にジワっと滲み出る鉄の味が気持ち悪かった。
遺影から分かる理央の満面の笑みは、まだ死んでいないんじゃないかと勘違いしそうになる。
今にも笑って棺から出てきそうなのに、
理央は目の前の小さな棺の中にすっぽりと収まって、もう二度と僕の前で笑顔を浮かべることはない。
橋の上からの転落死、あるいは橋からの飛び降り自殺。
しかし死ぬ前に書き置きの手紙やメモはなく、転落死の可能性が高いのではないかと言われている。
棺が開くことは一度もなかった。
最後のお別れなのに、理央の顔を見ることが出来ないのは
見せられる状態ではないということが分かる。