あの夜に焦がれる。
初めて理央に出会った日は今でも鮮烈に覚えている。
太陽が鬱陶しいほど頬を焼きつけ、じわじわと汗が滲み出る、そんな夏の日。
「おい響ー! 成績どーだった?」
終業式が終わり、リュックに荷物を詰めているとクラスメイトで高校から友達になった黒川 穂希(くろかわ ほまれ)が嬉しそうに駆け寄ってきた。
「まぁまぁかな」
「お前のまぁまぁは俺、信じてないからな」と僕の成績表を取り上げ勝手に見た挙句、げぇ……と汚い声を漏らした。
「なーにがまぁまぁだよ!! 学年3位じゃねぇか!」
「穂希うるさい」
はぁとため息がこぼれ、成績表を奪い返してリュックへ乱暴に押し込んだ。
「やっぱ響って賢いのな。俺今でも覚えてるぜ。中間テストの数学で響は90点代取ったけど、俺は赤点取って補習になってさー、その時響が呆れたような冷たい目で俺を見つめてきたこと!」
「覚えてないよそんなこと」
きっぱり言ってやった。提出物をテスト前日まで放ったらかして、徹夜で赤点回避出来ると思っていた穂希が100%悪い。