あの夜に焦がれる。


そんな愚痴が口から溢れ落ちそうになったが、ため息だけで我慢した。


「じゃ、僕寄るところあるから先に帰る」


リュックを背負い、教室を出ようとすると穂希が袖を引っ張った。


「待てって、途中まで一緒に帰ろうぜ」


「部活は?」


「今日はオフ! あーー、明日から夏休みは嬉しいんだけど地獄の部活が待ってるんだよなあ」


「早くしないと置いてくよ」


「あと2分! あと2分待ってくれ、荷物まとめないと」


穂希はサッカー部に所属している。他のクラスメイトに話を聞いたが、彼はサッカーが上手いらしい。


一年生で試合に出ているのは穂希だけらしいので、相当上手いのだろう。


ちなみに僕は部活に入らなかった。

穂希からサッカー部に誘われたけど絶対に嫌だと断った。


部活で汗を流して頑張っている人達を見ると、

僕には到底出来ないことだと思ってしまう。



何かに本気になったことはないし、

やりたいと思う気持ちも何故か僕にはない。


無理やり部活に入って中途半端に練習するよりも

最初から何にも属さない方が良いと思って部活には入らなかったのだ。


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