あの夜に焦がれる。
「悪い、お待たせ!」
穂希と一緒に教室を出ると、ムワッとした重たい空気がまとわりついた。
「廊下と教室の温度の差やばすぎ」
穂希はそう言ってパタパタと手をあおがせながら歩く。
窓は全開に開けているからか、外側の空気と内側の空気が混ざって、何とも言えないぬるさが首もとを撫でた。
「俺は部活三昧だけどさー、響は夏休み何すんの?」
「別に決めてないよ、でも外は暑いから用事以外では一歩も外に出ないつもりだけど」
「ちょっとは出た方が良いぜ、響は肌が白すぎるし、体調崩しやすそうだ」
ふと自分の手を見つめる。穂希と比べたら確かに白いが、そこまで白いわけじゃない。平均的な白さだと思う。
というかほとんどの時間を外で過ごしていて肌が黒くなった穂希と比べるものじゃない。
いや、比べて良いものじゃない。穂希のその肌の黒さは、ひとつの努力した結果だ。
見つめていた手から目を離し、視線を前に戻すとある人に目を奪われた。