あの夜に焦がれる。
こちらに向かって歩いてくる女性。
水色のような、灰色のような大きな瞳に吸い込まれそうになる。
雪のように真っ白な肌に、長い手足。地毛とは思えない明るめの茶髪。
白色のセーラー服がよく似合う、まるで人形のような……。
「おーい、響、大丈夫か」
隣に歩いていた穂希が僕の目の前に現れ、ビクッと肩が上がる。
「あれ、僕今何を……」
「響も女の人に見惚れたりするんだなー」
「は?」
「いやいや、さっき目の前歩いてた人にだよ。まあ、見惚れる理由も分かるぜ。あの人有名だもんな」
見惚れてた? いやさっきはあの人の瞳に吸い込まれそうになったというか。
「何だったんだろう、あの人……」
「響知らねーの? さっきの人、この学校じゃ有名なんだけど」
「知らないよ、初めて見たし」
「俺らの1個上の土屋理央先輩。容姿端麗だから学校中で有名だけど学校には気まぐれでしか来ないからちょっとミステリアスな存在なんだよ」