あの夜に焦がれる。
今日の朝10時から店頭に並ぶって書いてあったから売り切れてもおかしくはないなって思ってたけど、まだ残ってて良かった。
こいぬくん。を無事買えたことに安堵したが、同時にどこに置けば見つからないかというモヤモヤした悩みが浮かび上がる。
かわいいものが好き。
けれど僕のお母さんはそのことを認めてくれない。
男は男らしく育ってほしい、そう思っているのだろう。
小さい頃にかわいいものは女の子だけと飽きるほど聞かされてから、僕は出来るだけ男らしく振る舞うように努力した。
でも諦められなかった。だからこうしてかわいいものを集めてはお母さんに見つからないように部屋のあらゆるところに隠している。
本当は服やメイクにも興味がある。一度触れてしまえば、色んなものに手を出したくなるだろう。
でも服を隠す場所なんてないし、見つかった時に隠し通せるほど口は上手くない。
他から見れば男がかわいいものなんて気持ち悪い、そう考える人が多数だろう。
だから僕は家族にも友達にも、この複雑な思いを告げることはない。
嫌われたくない、否定されたくない、そんな強い思いが僕自身を縛っている。