あの夜に焦がれる。
額からだらだらと流れ落ちる汗を拭いながら、熱せられたアスファルトの上を歩く。
「あっつ……」
ずっとうつむいていた視線を前に戻すと、僕の瞳にある人が映った。
「え……」
目の前の一瞬の出来事に目を奪われた。
女性が橋の欄干に立つその瞬間が、まるで僕にはスローモーションのように見えた。
綺麗、ただその言葉が頭に浮かぶ。
少しお腹の見える丈の短いTシャツに、長い足が強調されるミニスカート、
ヒールの高い真っ黒なショートブーツを履きこなしている。
僕がその女性に目を奪われていることに気がついたのは、
その女性と目が合った時だった。
「水色……?」
いや、灰色?
彼女の瞳が太陽の光によってそう見えるのか灰色のような水色のような色をしていて、思わず目を何度もこすっては瞬きを繰り返した。
もしかしてさっき学校ですれ違ったセーラー服の……?
また吸い込まれそうになる彼女の瞳に僕の心臓は反応し、今までにないスピードでどくどくと脈を打った。
なんだこれ。
跳ねる心臓を左手で押さえつけながら、一度深呼吸をする。
僕のことを大きな瞳で見ていた彼女はようやく口を開いた。