あの夜に焦がれる。
門限は22時と決まっている。
小学生の時は18時、中学生の時は20時だった。少しでも門限に間に合わなければ、泣くほど叱られた記憶が今になっては懐かしい。
ちょうど青になった横断歩道を渡り、真っ黒な空を仰ぐ。
星が無数に輝く空に手を伸ばしてみるが届くわけもなく、ゆっくりと手を下ろす。
視線を前に戻すと、僕の目の前に人影が映る。
組んだ腕を橋の欄干に預け、空に輝く月を眺める男性。
こんなにも暑苦しい夜なのに、真っ黒なスーツを身につけている。
けれど夜風に吹かれる銀色の短い髪が真っ黒な世界に映えていて絵になる姿だった。
「ん……?」
遠くからだとあまり分からなかったけど、近づいてみると何故か見覚えのある人だった。