あの夜に焦がれる。


銀色に輝く髪、すらりとした高身長、整った顔。

そうだ、4月頃に一度学校で見かけたことのある人だ。


授業が少しつまらなくて窓の外を見ていた時に、反対側の校舎の廊下を歩いていたんだっけ。

太陽の光が銀髪を照らしているところがあまりにも綺麗だったから印象に残っている。


こんなに綺麗な人が学校にいたことを知らなくて、あの後も窓の外を見ていたけどその人が現れることはなかった。


橋にいる男性に目を奪われていることに気が付き、頭を横に振った。


違う違う、何をしているんだ。

理央を探しに来たのに全く関係のない人を見つめているなんて。


辺りを見回してみるが僕と男性以外に人影はない。


「おかしいな」


もう着いてるっていうから早めに来れるように早歩きしてきたのに。


スマホを取り出して理央に状況確認をしようとキーボードで文字を打とうとしたところ、誰かにするりとスマホを奪われてしまった。

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