あの夜に焦がれる。
「よっ、響」
「え? あれ、なんで」
声がした方へ振り向くと、銀髪の男性が僕のスマホを奪ってニヤニヤと笑みを浮かべているのだ。
この人は本当に理央なのか?
だって昼に会った時はあんなに長い髪をして、いかにも女性らしい格好をしていたのに。
今ここにいる理央は僕と同じくらい髪が短いし、昼とは真逆で男性らしい格好をしているのだ。
頭が混乱する。
「ははっ、もう限界。俺しかここにいないのにずっと目の前にいる俺を探すなんてな」
「うるさいな」
顔がきっと真っ赤になっているであろう僕の気も知らないで、理央はお腹を抱えて笑い続けた。
「笑いこらえるの大変だったな」
「声かけてよ」
「いや、面白くてつい」
そう言って理央はまた謎のツボにはまったのかお腹を抱えて笑った。
「急に容姿が変わったら分からないよ」
「こっちの俺も似合ってるだろ」
灰色の瞳は笑う。
確かに理央の言うとおりだと思った。