あの夜に焦がれる。
「おはよう響」
「おはよ」
勉強をある程度してからお腹が空いて仕方なかったので、一度手を止めリビングに顔を出した。
「あら、手が汚れてるじゃない。朝から勉強でもしていたの?」
僕は左利きということもあり、国語以外の勉強で文字を書くとどうしても手が汚れてしまう。
数学の問題に夢中だったこともあり、今日は手が真っ黒だった。
「ああ、うん。雨の音で目が覚めちゃって1時間くらい勉強してた」
「そう、朝からお疲れ様。もうすぐ朝ご飯が出来るところだったからちょうど良かったわ」
シンクで汚れた手を洗い流し、ちょうど食パンが焼けたのでお母さんが用意していた皿に取り出す。
食パンをテーブルに持っていくと目玉焼きとベーコン、ヨーグルトが用意されていた。
「じゃあ、食べましょうか」
お母さんは朝食作りで使ったフライパンを洗い終え、僕と向かい合わせに座り手を合わせた。
「いただきます」
食パンに薄くマーガリンを塗り、一口齧る。じゅわっと口に広がるバターが疲れた身体を癒してくれるようだった。
「今日は何をするの?」
「今日は昼から友達の家に行こうと思って。それまではいつも通り勉強かな」
「ねえ、その友達って……、昨日も会った子かしら」
「そうだけど」