あの夜に焦がれる。
「夏の終わりって……」
僕は何かを思い出すように口を手で押さえる。
理央と一緒に時を過ごしたのはたったの1ヶ月間。
僕が高校1年生、理央が高校2年生、まだ暑い夏の日に出会った。
楽しい時間がこれからもこの先もずっと続いていくと思っていた。
それなのに理央は夏の終わりに3年という長い時間の間、僕の前から姿を消したのである。
そう、夏の終わりに。
「……やっぱり理央もあなた方も僕に何か隠してたんですね」
理央が姿を消した時、僕は何度も理央の家を訪ねて、理央の両親に問い詰めたことがある。けれど理央のお母さんもお父さんも、理央が旅に出たとしか口を割らなかった。
諦めるしかなかった。
待つ、ただ理央の帰りを待つ。それだけが唯一僕に出来ることだった。
久しぶりに理央が帰ってきたかと思えば、突然の死。
一体理央に何があったと説明してくれるだろうか。
「ごめんね響くん、理央から口止めをされていたからどうしても言えなかったの」
「……はい」