あの夜に焦がれる。
3年前の、青くて輝かしい思い出を話すことにした。
本当は理央の友達と名乗っても良いのか分からない。
何より理央の異変に気づけなかったこと、理央と一緒に過ごしたのはたったの1ヶ月だということ。
上手く話せるかは分からない。きっと忘れてしまっている出来事もあるだろう。
けれど理央の両親は僕の話を真剣に聞いてくれようとしている。
だから僕はひとつひとつ言葉にしようと思う。
理央が見ていた世界は僕が全く知らないことばかりで、理央と過ごした日々はどの時間よりも濃くてキラキラと輝いていたこと。
新しい世界を教えてくれた理央と一緒に過ごす日々は何よりも楽しくて、心地が良かったこと。
だから理央とこれからも一緒にいたいと、そう密かに思っていたこと。
でもその思いは叶わなかったこと。
理央はある時、僕の前から姿を消した。
僕が学校生活を送って高校を卒業し、大学生になるまでの約3年という長い時間を。
あの時何か理央に話を聞いていれば、あの時元気のない理央に寄り添っていれば、
理央の人生の結末は何か変わっていたのではないかと思ってしまう。