クズ男に囚われたら。
───そこからは、いつも通り。
音の遮られた音楽室。
何度も、何度も。
角度を変えては口づけて、時折甘い声で名前を呼ばれる。
決して、恋人などという綺麗な関係ではない。
わたしは、女癖の悪い瀬能遊という男の、数いる女の子の中の1人。
……本当、馬鹿げてる。
ハマったら終わり。抜け出せない。
今この状況の自分に心底呆れながらも、さらに深く、深く、甘い罠にハマっていく。
せめてもの抵抗は、身体までは許してはいないこと。
それと、
「……呼べよ、名前」
「せ、の…っ」
「……そうじゃねぇって」
他の子たちのように、"遊"とは呼ばないこと。