クズ男に囚われたら。
───来た。
「瀬能 遊」
とある月曜日の朝。
風紀委員の腕章を付けて校門に立つわたしは、登校してくる生徒たちの中で、一際目を惹かれる男の名前を呼んだ。
「おー、橘花」
こちらを見るなり、気怠げにあくびをしたこの男。
切れ長の二重瞼から覗く瞳に、不機嫌な顔のわたしが映っている。
……あぁ、今日も憎たらしい。
「今日から生活指導週間が始まるって言ったよね?」
「うん、聞いたけど」
「だったらなんでそんなにいつも通りなの」
両耳にキラリと光るシルバーのピアスに、緩められたネクタイ。
そしてなにより、その特徴的なシルバーアッシュの髪。
うちの高校だって、そんなにガチガチに校則が厳しいわけではない。
別に髪を染めるのが絶対にダメ!というわけじゃないんだ。
だとしても、ブリーチを入れて染められたらしいその髪色はいくらなんでもアウト。
先週の金曜日にちゃんと言っておいたのに。
約束破ったな、バカ瀬能。
こんなことになるなら……"アレ"、返してもらうんだから。