クズ男に囚われたら。
「まぁまぁ。そう怒るなって」
不機嫌なわたしとは正反対に、この男は可笑しそうにクツクツと笑う。
……わかっててやってる。
そう思うには十分過ぎるその笑みは、明らかにわたしの反応を見て楽しんでいた。
2年C組、瀬能 遊。
彼は、この学校で有名な問題児だ。
わたしが所属する風紀委員にある注意すべき人物リストにも、もちろん彼の名前が載っている。
校則に従わない服装に髪色。
学校にはいるはずなのに、授業に出席するのは最低限必要な単位分だけ。
そして、極めつけは───。
「遊〜!」
……ほら、来た。
彼の後ろから駆け足でやってきた女の子。
生活指導週間で服装はきちんと整えられているけれど、この子も普段は派手な格好が目立つ。
瀬能の隣までやってくると、そのままギュッと彼の腕にしがみついた。
頬を赤らめて、目をキラキラさせて。
「おー、カナ」
「おはよっ、遊」
そしてそんな彼女を、瀬能の瞳が捕えた。