クズ男に囚われたら。
「ハイッ!できたよ」
ニコニコと笑う彼女は、本気で瀬能のことが好きなのだろうか。
まぁ、好きなんだろうな。
あんなにキラキラした笑顔見せてるんだもん。
……可愛いなぁ、とはちょっと思う。
と同時に、気の毒にも思った。
だって、相手が彼だから。
チラッと、瀬能がこちらを見た。
かと思えば、すぐに視線を彼女に戻して────。
「……っ!」
まるで、見せつけるかのように。
挨拶をするかのように、ごく自然に。
───瀬能は、彼女にキスをした。
「ありがと、カナ」
「えへへ。どういたしまして」
朝の登校時間。
たくさんの生徒が周りにいたって、目の前に風紀委員がいたって、おかまいなし。
静かながらに彼女に笑いかけた瀬能を見て、ますます目の前にいる彼女を気の毒に思った。
……彼にハマったら、終わりなのだ。