クズ男に囚われたら。


瀬能の言う「本気」は信用ならない。

その場しのぎの、女の子を喜ばせるためだけの方便。つまりはウソ。


それがわかっていても、この瀬能遊という男にハマってしまった女の子たちにとってはそれが全てなんだ。


……これほどバカバカしい話はない。



「髪の色だって、あれだけ事前に言っておいたのに」

「あれ、もしかして怒ってる?」

「当たり前でしょ」


ムスッとした表情を見せても、瀬能は楽しそうに笑うだけ。


「悪かったって」

「思ってないくせに」

「思ってる思ってる」


ほら、またそうやってウソをつく。


……それなのに。




「───七帆(なほ)

「……っ!」

「悪かったって。許してよ」


そうやって甘い声で言われると、そのウソが本気だと思いたくなるんだ。


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