クズ男に囚われたら。


「……クズ男」

「わあ、すげぇ怒ってる」


そっぽを向くわたしに、瀬能が近づいてきたのがわかった。

ふわりと鼻を掠めるのは、バニラのような甘い香り。


そうやって、甘い声で言えば女の子はみんな許してくれると思ってるところ、本当ムカつく。



「七帆」

「………」

「なーほ」


それなのに、その頭上から振ってくる声に釣られて顔を上げるわたしはきっとバカなんだろうな。


何度でも言える。


瀬能遊という男にハマったら終わり。

女の子はみんな抜け出せなくなるんだ。……気の毒なほどに。



目の前には瀬能の瞳があった。

後頭部に優しい手が触れる。



───彼からの甘いキスが、降った。


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