Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 玄関土間は三人が入っても余裕があった。左側にはシューズクローゼットと物置を兼ねたスペースがあり、そちらにも上がり(かまち)が続いているため、どちらからでも出入りは可能だった。

 瑠維は手に持っていた袋から全員分のスリッパを並べたが、志賀は自分のものがあると断ったので、春香と瑠維だけがスリッパに履き替える。

 春香は二人の後ろを歩きながら、家の中をじっくり眺めていた。外見は豪邸のイメージだったのに対し、内装はどこか素朴な印象を受ける。

 白の漆喰の壁と、くすんだ水色の腰壁。わざと見せている梁、フローリングの床。全てが合わさり、温かみのある空間を作り出していた。

 二人とは別行動をするかのように、春香は一人で移動し始める。

 アイランド型のキッチンと、その背面には造り付けの食器棚。白い扉には飾りが施され、まるでフランス辺りの台所に立っているかのような気分になる。

 壁側のアーチ型の入口を入ると中にはパントリーがあった。こんなに収納出来たら、買い物だって少なくてすむ。

 浴室も広々としていて、ゆったりとした時間を過ごせそうだった。ただ脱衣所の壁がやけに可愛らしい小花柄だったのを見た時、先ほどの志賀の言葉を思い出した。

『だから急にカラーの変更が入ったんですね!』

 彼らしくないと思ったのは、春香を意識して変えたからなのだろうかーーそう思うと胸がキュンとする。

 リビングに面した大きな窓の向こう側にはウッドデッキと庭が広がり、周りは樹脂製の高い塀が庭全体を囲んでいた。

 これなら人の目が気にならないし、誰かが入ってくることはないだろう。

 それから春香は二階に上がると、廊下沿いに四つの部屋があることに気付く。一つ一つ順番に見ていくと、同じくらいの広さの部屋だが、壁紙がそれぞれ違っていた。水色、淡い緑、レンガ、木目と、どの部屋を見ても瑠維らしくない気がしてクスッと笑ってしまう。

 これっていつ頃変更することになったのかしら……急だったのなら大変だったはず。

 春香は部屋の窓からバルコニーに出た。そこはどの部屋にも繋がっていて、そして目の前には大きく広がる海が見えた。
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