Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
なんてきれいなのかしら……キラキラと輝く水面と、鼻先をかすめる潮の香りが心を癒してくれる。ここにいれば嫌なことも全て忘れられるような、そんな気持ちになれた。
ぼんやりと海を眺めていると、
「春香さん?」
と背後から瑠維の声が響く。
振り返ろうとした途端、背後から抱きしめられる。温かくて、ホッとする香り。たったこれだけのことでリラックスしてしまう自分がいた。
しかしやってきたのは瑠維だけで、先ほどの男性の姿は見えなかった。
「あれ、リフォーム会社の方は?」
「点検作業も終わったのでもう帰りましたよ」
「本当? 全然気付かなかった」
それほど長い間、ここから海を眺めていたということだろうか。時間が経つのが早過ぎて驚いた。
「すごく素敵なところだね」
「気に入ってくれましたか?」
「もちろん……というかこの家、完全に私の好みなんだけど」
「当たり前です。春香さんの好みは高校生の時からしっかり熟知してますから。あなたと暮らすならこういう家だろうなってずっと妄想していました」
瑠維は微笑むと春香の手を取り、そっと握った。
「最近こういう家を見ると、必ず『かわいい』って言ってましたよね」
「……確かに言ってたかも」
「それに仕事モードじゃない時の春香さんは、こういう温かみのあるイメージですよ。あの日……図書館で見た春香さんもそうでしたから」
春香は驚いたように目を見開く。
「図書館で? だって立て膝で本を読んでいたのなら、ちょっとお行儀が悪い感じじゃない?」
「あはは。まぁそれもあるかもしれませんが、飾らないあなたを垣間見た気がしたんです。きっと皆に見せる明るく勝気な姿も春香さんなんでしょうけど、実は素朴で無邪気で純粋で……。どちらも含めて春香さんだけど、たぶん僕はあの時、自分だけが知る一面を知ってあなたの虜になってしまったんだと思います」
瑠維は春香の手を引いて部屋に入ると、静かに窓を閉めた。それから手を繋いだまま階段を降り始める。
「この家を初めて訪れた時、僕のイメージではないなと思ったんです。だって色合わせが面倒で白黒ばかりの僕ですから。どちらかといえば、春香さんらしさを感じていたのかもしれません」
「えっ、じゃあ買った時からこの漆喰の壁と腰壁だったの?」
春香が聞くと、瑠維は頷いた。
「たまたまですけどね。内装より僕の目的はセキュリティがしっかりしている家で、合致したのがここだったんです。だから内装は大幅に変えようと思っていいました。でもあなたと再会して、一緒に住むようになって……まだ付き合ってもいないのに、あなたを意識し始めてしまって、気付いたら当初の予定と全く違うものになっていました」
リビングに戻り、春香は再びキッチンに入っていく。家の中を回って、この場所の雰囲気が一番気に入ったのだ。
「私と住むことを意識して変えなかったの……?」
瑠維が微笑んだのを見て、春香は居ても立っても居られず、彼の胸に飛び込んだ。
ぼんやりと海を眺めていると、
「春香さん?」
と背後から瑠維の声が響く。
振り返ろうとした途端、背後から抱きしめられる。温かくて、ホッとする香り。たったこれだけのことでリラックスしてしまう自分がいた。
しかしやってきたのは瑠維だけで、先ほどの男性の姿は見えなかった。
「あれ、リフォーム会社の方は?」
「点検作業も終わったのでもう帰りましたよ」
「本当? 全然気付かなかった」
それほど長い間、ここから海を眺めていたということだろうか。時間が経つのが早過ぎて驚いた。
「すごく素敵なところだね」
「気に入ってくれましたか?」
「もちろん……というかこの家、完全に私の好みなんだけど」
「当たり前です。春香さんの好みは高校生の時からしっかり熟知してますから。あなたと暮らすならこういう家だろうなってずっと妄想していました」
瑠維は微笑むと春香の手を取り、そっと握った。
「最近こういう家を見ると、必ず『かわいい』って言ってましたよね」
「……確かに言ってたかも」
「それに仕事モードじゃない時の春香さんは、こういう温かみのあるイメージですよ。あの日……図書館で見た春香さんもそうでしたから」
春香は驚いたように目を見開く。
「図書館で? だって立て膝で本を読んでいたのなら、ちょっとお行儀が悪い感じじゃない?」
「あはは。まぁそれもあるかもしれませんが、飾らないあなたを垣間見た気がしたんです。きっと皆に見せる明るく勝気な姿も春香さんなんでしょうけど、実は素朴で無邪気で純粋で……。どちらも含めて春香さんだけど、たぶん僕はあの時、自分だけが知る一面を知ってあなたの虜になってしまったんだと思います」
瑠維は春香の手を引いて部屋に入ると、静かに窓を閉めた。それから手を繋いだまま階段を降り始める。
「この家を初めて訪れた時、僕のイメージではないなと思ったんです。だって色合わせが面倒で白黒ばかりの僕ですから。どちらかといえば、春香さんらしさを感じていたのかもしれません」
「えっ、じゃあ買った時からこの漆喰の壁と腰壁だったの?」
春香が聞くと、瑠維は頷いた。
「たまたまですけどね。内装より僕の目的はセキュリティがしっかりしている家で、合致したのがここだったんです。だから内装は大幅に変えようと思っていいました。でもあなたと再会して、一緒に住むようになって……まだ付き合ってもいないのに、あなたを意識し始めてしまって、気付いたら当初の予定と全く違うものになっていました」
リビングに戻り、春香は再びキッチンに入っていく。家の中を回って、この場所の雰囲気が一番気に入ったのだ。
「私と住むことを意識して変えなかったの……?」
瑠維が微笑んだのを見て、春香は居ても立っても居られず、彼の胸に飛び込んだ。