Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
* * * *

 量で言えば瑠維の方が多かったのに、食べ終わるのは春香とほぼ同じだった。

「美味しかったねぇ」
「えぇ、とても美味しかったです」

 瑠維が完食した皿を見て、春香は嬉しそうに微笑んだ。

「どうかしましたか?」
「ううん、これだけの量を完食しちゃうのがすごいなぁと思って。やっぱりきれいなお皿は気持ちがいいね」
「先輩も完食じゃないですか」
「うん、私、こう見えて結構食べるから」
「確かに。先輩が残しているところは見たことがないですね」

 そう言われ、春香は首を傾げる。瑠維と一緒に食べた記憶がなかったからだ。

「……一緒に食べたこと、あった?」
「時々学食で近くにいましたから」

 そう言われてみれば、そうだったかもしれない。自分たち以外のことにはあまり目を向けていなかったから気付かなかった。

「私たちって、客観的に見てどうだった?」
「それは第三者から見た先輩たちということですか?」
「そう。あの頃って生きていくことに一生懸命過ぎて、周りが見えていなかった気がするんだよね。だから時々思い出しては、なんであんなことしちゃったのかなーって後悔することもあって……」
「……先輩たちは皆に一目置かれているグループでした。簡単に言えば一番目だっている人たちで、それだけ影響力もありました」

 瑠維の言い方には含みがあり、その後に続く言葉が気になって仕方がなかった。

「でも池田先輩はその影響力を決して悪い方向には使わなかったーー」

 博之は自分から前に出るタイプではなかった。何かを決める時にも必ず周りの意見を聞いたし、むしろまとめることに()けていたように思える。

「まぁつまりは楽しそうな陽キャの集まりだったというのが、正直な印象です」
「悪目立ちしてなかった?」
「周りに害を与えていないし、時々うるさいと思うことはありましたけど、別に迷惑ではなかったですよ」
「そ、そっか……なんかちょっと安心した……」

 博之を見ていたのだろうが、彼の分析力にただ感心してしまった。すると春香の中で、瑠維への関心が高まっていく。

 春香が知っている瑠維は、いつもメガネをかけ、きっちりと制服を着こなし、余計なおしゃべりはしない。だけどそれだけではない彼を知りたくなった。
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