Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
『それはこれから少しずつ知っていけばいいんじゃない? あの男のことが終わったとしても、連絡先を知っていたら繋がっていられるわけだし。でもたった一日ですごく仲良くなっててびっくりした』
「ねっ、私もびっくりした。あの頃はほとんど話したことはなかったけど、ヒロくんを通して知ってる存在だったからなぁ……」
『そんな簡単じゃない気もするけど……。で、お迎えはどれくらいの期間やってくれるのかな?』
「私が安心出来るまで続けてくれるって」
春香が答えると、椿は突然黙り込んだ。しばらく静かな時間が流れる。こういう時は何か考え事をしている時だとわかっていた。
『……そっか。じゃあお願いしちゃっていいかもね』
「うん。ところで椿ちゃん、今日は用事があるって言ってたよね」
ニヤニヤしながら核心をつく。すると電話口の向こうで、椿の叫ぶような声が響いてきた。どうやら春香の予想は当たっていたらしい。
『……じ、実はこれからデートなんだけど、待ち合わせの時とかすごく緊張しちゃうんだよねー』
「うふふ。実はそうかなぁって思ってた。付き合い始めてどのくらい経つの?」
『仕事を通して再会して二カ月くらいなんだけど、付き合い始めたのは一カ月くらい前かな』
「……そんなに長いこと私に秘密にしてたわけねぇ。もういいけど。これからは逐一報告してよね! 推し同士が交際なんて、そんな美味しいネタはないんだから」
これは春香の本音だった。これから二人の中が深まっていけば、椿と会う時間はどんどん減っていくに違いない。だとしても、椿の一番の友達でいたかった。
『うふふ。わかった、ちゃんと報告する』
「それにしても椿ちゃんってば、ちゃんと恋してるんだねぇ。なんか羨ましくなっちゃうよ」
『春香ちゃんだって、もしかしたら意外なところから恋が始まるかもしれないよ』
「そうかなぁ? まぁ期待しないで待ってみる。デート楽しんできてね」
『うん、春香ちゃんは気を抜かずに気をつけてね』
「うん、わかった。ありがとう」
電話を切ると、何故だか少し寂しくなる。大切な友達をとられてしまったような、軽い嫉妬心が湧いてくる。
椿ちゃんはモノじゃないんだからーーでも彼女の一番の座は、今は確実に博之のものだ。
私も誰かの一番になれる日が来るのだろうか……ヒロくんにフラれた後も、いい恋愛には巡り会わなかった。だから少し臆病になっている自分がいる。
原因はわかってる。告白されて付き合うけど、自分が好きになる前に恋が終わってしまうから。博之に青春を捧げてしまったから、それ以上の出会いがないというのが実際のところだろう。
「ドキドキかぁ……しばらくしてないなぁ」
そう思った途端、昨日の出来事が思い出される。瑠維に対して胸がときめく瞬間があった。
しかし慌てて頭を振る。彼の親切心を歪めて受け取ったらいけないーーそんなことを思いながら春香は立ち上がると、買い物に行くための身支度を始めた。
「ねっ、私もびっくりした。あの頃はほとんど話したことはなかったけど、ヒロくんを通して知ってる存在だったからなぁ……」
『そんな簡単じゃない気もするけど……。で、お迎えはどれくらいの期間やってくれるのかな?』
「私が安心出来るまで続けてくれるって」
春香が答えると、椿は突然黙り込んだ。しばらく静かな時間が流れる。こういう時は何か考え事をしている時だとわかっていた。
『……そっか。じゃあお願いしちゃっていいかもね』
「うん。ところで椿ちゃん、今日は用事があるって言ってたよね」
ニヤニヤしながら核心をつく。すると電話口の向こうで、椿の叫ぶような声が響いてきた。どうやら春香の予想は当たっていたらしい。
『……じ、実はこれからデートなんだけど、待ち合わせの時とかすごく緊張しちゃうんだよねー』
「うふふ。実はそうかなぁって思ってた。付き合い始めてどのくらい経つの?」
『仕事を通して再会して二カ月くらいなんだけど、付き合い始めたのは一カ月くらい前かな』
「……そんなに長いこと私に秘密にしてたわけねぇ。もういいけど。これからは逐一報告してよね! 推し同士が交際なんて、そんな美味しいネタはないんだから」
これは春香の本音だった。これから二人の中が深まっていけば、椿と会う時間はどんどん減っていくに違いない。だとしても、椿の一番の友達でいたかった。
『うふふ。わかった、ちゃんと報告する』
「それにしても椿ちゃんってば、ちゃんと恋してるんだねぇ。なんか羨ましくなっちゃうよ」
『春香ちゃんだって、もしかしたら意外なところから恋が始まるかもしれないよ』
「そうかなぁ? まぁ期待しないで待ってみる。デート楽しんできてね」
『うん、春香ちゃんは気を抜かずに気をつけてね』
「うん、わかった。ありがとう」
電話を切ると、何故だか少し寂しくなる。大切な友達をとられてしまったような、軽い嫉妬心が湧いてくる。
椿ちゃんはモノじゃないんだからーーでも彼女の一番の座は、今は確実に博之のものだ。
私も誰かの一番になれる日が来るのだろうか……ヒロくんにフラれた後も、いい恋愛には巡り会わなかった。だから少し臆病になっている自分がいる。
原因はわかってる。告白されて付き合うけど、自分が好きになる前に恋が終わってしまうから。博之に青春を捧げてしまったから、それ以上の出会いがないというのが実際のところだろう。
「ドキドキかぁ……しばらくしてないなぁ」
そう思った途端、昨日の出来事が思い出される。瑠維に対して胸がときめく瞬間があった。
しかし慌てて頭を振る。彼の親切心を歪めて受け取ったらいけないーーそんなことを思いながら春香は立ち上がると、買い物に行くための身支度を始めた。