Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 とりあえず町村の方を振り返らないようにしながら、急ぎ足で近くのファミレスに入る。

 つけられていたらどうしようーーそんな不安に駆られながら、メニューが表示されたタブレットを開き、目についたアイスクリームを頼む。

 椿に連絡をしたかったが、きっと今はデート中。自分のことで水を差すようなことはしたくなかった。

 あの人は今も外にいるのだろうか。このまま家に帰っても大丈夫? もし家の前で待ってたら? アイスが届くまでの間、春香は悪いことばかりを考えてしまう。

「お待たせしました」

 店員が持ってきたアイスクリームを口に含むが、全く味がしない。昨夜瑠維と食べたアイスはあんなに美味しかったのにーー。

 その時に瑠維のことを思い出してハッとする。昨日再会したばかりの人に助けを求めるなんて図々しいだろうか。でも今の春香には、彼以外に頼れる人はいなかった。

 春香はカバンからスマホを取り出すと、震える手で画面に触れる。そして昨夜の瑠維とのメッセージのやり取りの画面を開いた。

『何かありましたらすぐに連絡してください。おやすみなさい』

 このメッセージをもらった時、すごく心強かった。椿や家族以外に頼れる人が出来た気がして嬉しくなった。

 スマホの画面を打ちながらも、やはりどこかで躊躇ってしまう自分がいる。

 彼はあの男とは違う……でもそうと言い切れる? 信用出来る人? 昨日再会したばかりなのに? でも彼の言葉を信じたい自分もいた。

 何度もメッセージを打っては消し、読み返しては画面を閉じ、そしてとうとう送信ボタンを押した。

『時間がある時、連絡もらえる?』

 大丈夫。彼は信用できる人。心の中でそう強く願った。

 スーパーの袋の中には冷凍の食材もあり、袋の外にまで結露が付き始めている。水滴に触れると、冷たさに指先が跳ねた。それでも拭こうとする気持ちにはなれず、ただ眺めているしかなかった。

 瑠維くんは今、何をしているのかな……仕事中だったら申し訳ない。でも時間が出来たら返事をくれるだろうか。

 そんなことを考えていると、春香のスマホにメッセージが届く。恐る恐る画面を見ると瑠維の名前があり、短分のメッセージが表示されていた。

『どうかしましたか?』

 たったそれだけの文章で、体の力が抜けていく。今の状況を聞いてくれる相手がいてくれることがわかっただけで、こんなにも安堵感に包まれた。
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