Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
* * * *

 警察に着いた春香と瑠維は、机と椅子が置かれただけの小さな部屋へと案内された。緊張した面持ちで椅子に腰を下ろした春香だったが、隣に座った瑠維がそっと肩に手を置いてくれたので、彼に向かって小さく頷いてから深呼吸をする。

 町村の事件について捜査をしている刑事を待つ間、しばらく沈黙の時間が流れる。

 その時ドアが開き、一人の男性の刑事と制服警官が部屋の中へと入ってきた。ややクタッとした白いワイシャツに、グレーのスラックス。五十代半ばくらいの男性のメガネの奥の瞳は、どこか厳しい光を帯びていた。

「お待たせしてすみません。川崎といいます。佐倉春香さんで合っていますか?」
「はい、佐倉です。よろしくお願いします」
「今回は大変でしたね。不法侵入だけではないようですので、こちらもただいま捜査中でして。全てはお話出来ませんが、佐倉さんにお話を聞けたらと思っています」

 それから隣に座っていた瑠維に目を向けた川崎だったが、何故か驚いたような顔になる。

「あぁ、君は!」

 瑠維は頭を下げると、
「ご無沙汰しています」
とだけ告げた。

「おや、佐倉さんとお知り合いなんですか?」
「高校の先輩なんです。今回のことで何か助けられることがあればと思いまして」
「そうでしたか。まぁ君がいれば心強い。というか、元気そうで安心したよ」
「はい、ありがとうございます」

 会話に入れなかった春香は、不思議そうに二人を見つめた。まるで知り合いのような話ぶりが気になり、緊張が少しだけ和らいだ。

 川崎は手に持っていた資料らしき紙を見ると、春香の方に向き直った。
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