Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「おはよう、瑠維くん。すごく美味しそうなんだけど、もしかして起こしちゃった?」
「おはようございます。いえ、普段の起床時間だったので」

 Tシャツにスウェット、メガネをかけた瑠維の声が、心なしか穏やかに感じ取れたのは春香の勘違いだろうか。

 ソファにカバンと上着を置いた春香は、とりあえずお腹を満たそうと椅子に座る。瑠維は急須に茶葉を入れ、温かいお茶をマグカップに注いでいるところだった。

「朝からお茶がいただけるなんて……。でも急須が家にあるなんてびっくり」
「湯呑みはないんですけどね」

 マグカップを春香の前に置き、キッチンを回ってカウンター側にやってきた瑠維は、背後から春香を抱きしめた。

「ようやく春香さんと結ばれたのに、朝起きたら隣にいなくて少し寂しかったです」
「えっ⁈ あっ、ごめんね! ほら、いろいろ疲れちゃったかなぁと思って、起こさないように出てきたの」
「……疲れてなんていませんよ。お望みなら今からでも動けますけど」

 瑠維の手が春香の胸まで下りていくと、指先を動かし始めた。昨夜のことで春香の体は少し敏感になっているようで、思わず甘い声が漏れそうになる。

「だ、ダメダメ! だってこれから仕事だし……帰ってから……ね?」
「わかりました。《《帰ったら》》ですね」

 これは完全に帰ったらそういうことになりそうだ。そう考えるだけで頬が熱くなる。

 瑠維は名残惜しそうに手を離すと、隣の席へと座った。

「……瑠維くんって、その、あんまりそういうことに興味ないのかなって勝手に思ってた」
「まぁ普段はそこまで興味はないですよ。むしろ一生しなくても生きていけると思っていましたから。でもやっぱり好きな人が相手では欲望を抑えられないことがわかりました」

 そう言ってから味噌汁を啜る。それがおいしそうに見え、春香もお椀を手に取ると味噌汁を口にした。

「あぁ美味しい……」

 お腹と心に温かさが染み渡るのを感じながら、春香は今の言葉を頭で復唱しながら首を傾げた。

「ん? 今一生って言った?」
「えぇ、言いましたよ。僕のモノがちゃんと機能するんだっていうことを初めて実感出来たので良かったです」
「えっ⁈ 昨日が初めてってこと⁈ 初めてであんなにテクニシャンなの⁈」
「当たり前ですよ。僕は春香以外を好きになったことはないと言ったじゃないですか。まぁ知識でいろいろ頭に入っていただけですが、そう思っていただけたのなら嬉しいですね」

 瑠維くんも初めてだったーーそれをなんでもないことのように話してしまう瑠維が素敵だと思った。
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