大神様の呪いのふみきり
☆☆☆

それでも凛子があの指輪を捨てなかったのは、ただの偶然だった。
洋平と一緒に暮らすからにはあの指輪は処分しないといけない。

「ただのおもちゃだし」
当時あれだけ欲しいと感じた指輪は、もうなんの魅力も感じなかった。

それはただの偽物のパールでしかなくて、特別な指輪は今自分の指にはまっている。
だから凛子は迷わずにそれをゴミ箱へ捨てたのだ。

けれど洋平が坂谷家へやってきたその日、ヒナは水槽の中に指輪があることに気がついた。
どうして指輪がここに?

もしかして、母親がゴミ箱から拾って水槽に入れたんだろうか?
母親は水槽の中にビー玉やおはじきを入れてキラキラ輝くのを見るのが好きな人だ。

だから、きっとそうに違いない。
そう思ったけれど、洋平がいる場所では取り出すこともできない。

あの指輪を見ればきっと洋平はヒナのことを思い出す。
そして指輪がここにあることを疑問に感じるはずだ。
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