大神様の呪いのふみきり
沙友理はそのまま後ろに尻もちをついてしまった。
目の前に真っ赤なワンピースを着た女の子がいる。

目は灰色で、肌は黒ずんでボロボロで、そして左手の薬指がない。
大神様で間違いなかった。

「い、いや……誰か助けて!」
懸命に声を振り絞って叫ぶけれど、ここはすでに大神様の世界。

そこにいるのは大神様と沙友理のふたりだけだった。
沙友理は立ち上がって逃げ出そうとするけれど、腰が抜けてしまったうまくいかない。

地面を這うようにして移動していると、大神様が回り込んできた。
「ねぇ、私の大切なものを探して」

大神様の声は老婆のようにしゃがれて、ひび割れている。
沙友理は恐怖でカチカチと奥歯を鳴らして大神様を見た。

同年代という情報がなければ年齢はわからない。
とても幼くも見えるし、とても年をとっているようにも見える。

「お……大神様……」
沙友理は頬をひきつらせながら名前を呼ぶ。

自分たちが持ってきた花へ視線を向けたけれど、それもいつの間にか消えていた。
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