大神様の呪いのふみきり
☆☆☆

そうして何時間が経過しただろうか。
気がつくと周囲は暗くなり始めていて、遮断器の赤い光が頼りになっていた。

土でよごれた手を止めて沙友理はフミキリへ視線を向ける。
大神様の世界に引き込まれてから1度も電車は通っていない。

遮断器も降りっぱなしだ。
人の声も鳥の声も聞こえてこない、孤独な世界だった。

大神様は10年前に死んでから、ずっとここにいるんだろうか。
そんな風に考えてみると、胸が傷んだ。

大神様は自分たちと同じ14歳で死んでしまった。
これからやりたいことや、夢だってあったかもしれないのに。

それらをすべて奪われてしまったんだ。
それなら指の一本くらい探してあげたいと思ってくる。

だけど見つからない。
どれだけ探しても、見つからないんだ。

「ねぇ……話ができる?」
制服や顔に土がついたボロボロの姿で沙友理は大神様に近づいた。
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