大神様の呪いのふみきり
沙友理は自然と女子生徒に惹きつけられて視線を向けた。
女子生徒はスキップするように廊下を歩き、そして教室から出てきた男子生徒の前で足を止めた。

「ヒナ」
男子生徒が名前を呼んで女子生徒の頭を撫でる。

その名前に聞き覚えがあり、沙友理は息を飲んだ。
ヒナ。

大神様の名前が大神田ヒナだったはずだ。
ということはこれは、大神様が自分に見せている映像なのかもしれない。

だから掲示板にあったプリントの日付が10年も前のものなのだ。
「10年前……これ、大神様が死ぬ前の映像なんだ」

今、大神様は嬉しそうに男子生徒と会話をしている。
それはごく普通の光景で、この後大神様が死んでしまうなんてきっと誰も思わないだろう。

大神様と男子生徒は親しそうに会話を続けていて、ふたりともほんのりと頬を赤らめている。
それだけでふたりは両思いなのだとわかった。
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