大神様の呪いのふみきり
新婚夫婦
フミキリから随分遠ざかっても大神様の声は聞こえてきていた。
それは街全体を包み込むような悲しい声だ。

聞いているだけで胸の奥にポッカリと穴が空いて涙が出てきそうになる。
3人は最寄りのバス停からバスに乗り込んで生徒手帳に書かれている住所の近くまでやってきていた。

中学校の学区内の端っこの方だ。
「ここからは表札を見逃さないようにしないとね」

沙友理に言われて2人は注意深く民家の表札を確認しながら歩き出す。
新しい家は表札が出ていないところも多くて苦戦しそうだけれど、10年以上前からこの周辺で暮らしているのなら、表札も出している可能性が高い。

一軒一軒慎重に調べていくと、沙友理が坂谷という表札を見つけた。
「この家だと思う」

念のために隣の家も確認してみるけれど、同じ名字ではなかった。
「行ってみるの?」
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