甘美な果実
俺がこんな状態でも変に気を遣うことなく普通に接してくれる両親とは、停学処分をきっかけに話をした。フォークであることについて、これまで面と向かって話したことはなかったが、それでも、俺に対する違和感に、両親は気づいていた。気づいていて、俺が告げるまで、俺の決めたタイミングで話してくれるまで、自分たちからはできるだけその話題を口にはしないようにしていたという。俺が隠したところで、全てお見通しだったようだ。
停学処分となった理由を、保健室での出来事を、俺は包み隠さずに打ち明けた。両親は終始真剣な顔で、時折相槌を打ちながら、俺が話し終えるまで口を挟むことなく聞いてくれた。自分の息子がクラスメートの一人を喰って殺しかけたと知っても、取り乱すことなく冷静に対応する両親は、まず最初に、話してくれてありがとう、と声を揃えた。事の経緯を全て聞き終えた後で、激しく咎められるだろうと覚悟していた俺は、その第一声に拍子抜けしてしまった。
経緯を知った両親に、ひとまず病院へと連れて行かれた俺は、そこでフォーク用の抑制剤を処方してもらった。薬でしばらく様子を見ることになったが、それは欲求を抑えるためのもので、なくすためのものではない。ケーキを口にしたい、喰い殺したいと思わないわけではなかった。それでも、以前に比べれば、多少はコントロールできるようになっている。近くにケーキがいないからかもしれないが、食欲と付き合っていくことができていると感じるのは、良い傾向のようで。だからこそ、篠塚に会ってしまうと、安定していたものが崩壊してしまうのではないかと不安を覚えてしまうのだった。
俺の停学処分中に、両親は一度篠塚の家を訪ねていた。他人の大事な息子を自分の息子が殺しかけたのだ。然るべき対応を取られても何も文句は言えまいと覚悟していたようだが、篠塚の両親は憤慨するどころか申し訳なさそうな表情をしていたという。フォークだと知りながら挑発してその行動を起こさせたのは自分の息子のようだからと話し、息子の怪我は自業自得だと。首に傷痕は残ってしまったが、何も問題はないと。それよりも、ケーキを食べてしまったお宅の息子さんのメンタルの方が心配だと。
停学処分となった理由を、保健室での出来事を、俺は包み隠さずに打ち明けた。両親は終始真剣な顔で、時折相槌を打ちながら、俺が話し終えるまで口を挟むことなく聞いてくれた。自分の息子がクラスメートの一人を喰って殺しかけたと知っても、取り乱すことなく冷静に対応する両親は、まず最初に、話してくれてありがとう、と声を揃えた。事の経緯を全て聞き終えた後で、激しく咎められるだろうと覚悟していた俺は、その第一声に拍子抜けしてしまった。
経緯を知った両親に、ひとまず病院へと連れて行かれた俺は、そこでフォーク用の抑制剤を処方してもらった。薬でしばらく様子を見ることになったが、それは欲求を抑えるためのもので、なくすためのものではない。ケーキを口にしたい、喰い殺したいと思わないわけではなかった。それでも、以前に比べれば、多少はコントロールできるようになっている。近くにケーキがいないからかもしれないが、食欲と付き合っていくことができていると感じるのは、良い傾向のようで。だからこそ、篠塚に会ってしまうと、安定していたものが崩壊してしまうのではないかと不安を覚えてしまうのだった。
俺の停学処分中に、両親は一度篠塚の家を訪ねていた。他人の大事な息子を自分の息子が殺しかけたのだ。然るべき対応を取られても何も文句は言えまいと覚悟していたようだが、篠塚の両親は憤慨するどころか申し訳なさそうな表情をしていたという。フォークだと知りながら挑発してその行動を起こさせたのは自分の息子のようだからと話し、息子の怪我は自業自得だと。首に傷痕は残ってしまったが、何も問題はないと。それよりも、ケーキを食べてしまったお宅の息子さんのメンタルの方が心配だと。