甘美な果実
口を挟むことなく紘の話を聞いた後に、ない知恵を絞って事態の把握を試みる。俺が篠塚を喰わないようにと自制をするために不登校を極めている間に、篠塚の様子が、それこそ、紘が困り果てるほどに、篠塚の様子がおかしくなっているようだ。
紘の言葉から推測するに、篠塚は、自分に向かってじわじわと迫ってくる何かに、誰かに、怯えているのだろう。その感覚が、飲食店で篠塚を喰おうとした俺に対して感じたものと同じ類のものであるのだとしたら、きっと、そういうことだ。そういうことになってしまう。自分だけでなく、家族すらも殺されるかもしれないと、動悸を覚えるほどに恐怖に震えているのがその証左だ。答えだ。最悪な、答えだ。
篠塚が、狙われている。虎視眈々と、狙われている。未だ捕まる気配のないシリアルキラーに。狙われている。飢えた殺人鬼の次の標的は、篠塚だ。間違いであってほしいが、篠塚はケーキだ。次の候補として上がってしまう可能性は十分にあった。犯人が逮捕されない限り、いつその順番が回ってきても、何も、何もおかしくはないのだ。それが、今。
危機を感じている篠塚を安心させるためには、殺人鬼を捕らえるか、俺が篠塚を喰うかだ。彼がそれを望んでいる。でも、犯人は特定すらされていない。誰だか分かっていない。そんな状態からいきなり犯人が炙り出され、すぐに逮捕に繋がるとは到底思えない。
凶悪犯が逮捕されないからといって、俺が篠塚を喰っていい理由にはならなかった。喰いたくても、いくら喰いたくても、それで篠塚を殺してしまうかもしれないなら、そんなことはしたくない。篠塚が望んでいようとも。俺は篠塚を殺したくはない。
今も尚、犯人逮捕に尽力しているであろう警察に期待するか、篠塚を蝕む不吉な予感が外れることを期待するか、そのどちらかを望むしかないようで。ただの学生の身でしかない俺や紘ができることなど高が知れている。
紘の言葉から推測するに、篠塚は、自分に向かってじわじわと迫ってくる何かに、誰かに、怯えているのだろう。その感覚が、飲食店で篠塚を喰おうとした俺に対して感じたものと同じ類のものであるのだとしたら、きっと、そういうことだ。そういうことになってしまう。自分だけでなく、家族すらも殺されるかもしれないと、動悸を覚えるほどに恐怖に震えているのがその証左だ。答えだ。最悪な、答えだ。
篠塚が、狙われている。虎視眈々と、狙われている。未だ捕まる気配のないシリアルキラーに。狙われている。飢えた殺人鬼の次の標的は、篠塚だ。間違いであってほしいが、篠塚はケーキだ。次の候補として上がってしまう可能性は十分にあった。犯人が逮捕されない限り、いつその順番が回ってきても、何も、何もおかしくはないのだ。それが、今。
危機を感じている篠塚を安心させるためには、殺人鬼を捕らえるか、俺が篠塚を喰うかだ。彼がそれを望んでいる。でも、犯人は特定すらされていない。誰だか分かっていない。そんな状態からいきなり犯人が炙り出され、すぐに逮捕に繋がるとは到底思えない。
凶悪犯が逮捕されないからといって、俺が篠塚を喰っていい理由にはならなかった。喰いたくても、いくら喰いたくても、それで篠塚を殺してしまうかもしれないなら、そんなことはしたくない。篠塚が望んでいようとも。俺は篠塚を殺したくはない。
今も尚、犯人逮捕に尽力しているであろう警察に期待するか、篠塚を蝕む不吉な予感が外れることを期待するか、そのどちらかを望むしかないようで。ただの学生の身でしかない俺や紘ができることなど高が知れている。