甘美な果実
「でも、だからって、何もしないなんて、俺は無理だ。殺されるかもしれないって苦しんでる篠塚を前に、黙って見てるだけなんて、できない」
「感情だけでどうにかできる話じゃないだろ。篠塚を思って熱くなるのは結構だけど、捜査能力のない俺らが闇雲になったところで、何か成し遂げられることがあるとは思えない」
「じゃあ、どうすんだよ。篠塚の予感が当たったら、篠塚、殺されるかもしれないんだぞ。このままそうなるのを傍観してろっていうのかよ」
「そうは言ってない。俺だってどうにかしたいって思ってる。篠塚のことなんかどうでもよかったら、喰い殺したいのをわざわざ我慢するようなことなんかしないし、向こうが望んでるなら、それを理由にしてさっさと喰い殺してる」
「喰い殺してるって、なんだよ。喰い殺したくはないんじゃないのかよ。自分にとってどうでもいい人だったら、瞬は我慢せずに喰うのかよ。それじゃあ、殺人鬼と一緒じゃねぇかよ」
「喰いたければ喰えって言ったのは紘だろ。俺が喰い殺しそうになったら、紘が止めてくれるんだろ。こっちは血肉を喰わないとずっと飢餓状態のようなものなんだよ。篠塚のことも、喰っていいなら喰いたい。喰えるものなら喰いたい。喰いたくて喰いたくてたまらない。俺は篠塚を喰い殺したい。喰い殺したいくらい、喰いたいんだよ。フォークじゃない紘には、一生理解できないだろ」
吐き捨てるように言い切ってしまってから、ハッとなった。沈黙が広がり、紘の返答がなくなり、全身の熱がゆっくりと冷えていくのを感じる。吐いた言葉を反芻した。言ってはいけないことを言ってしまった。こんな無意味な口論をするつもりではなかった。鬱憤を晴らすように感情的になるつもりもなかった。どうすれば篠塚の不安を消せるのか、篠塚が殺されずに済むのか、という話だったのに、俺がその動線を変えてしまった。
「感情だけでどうにかできる話じゃないだろ。篠塚を思って熱くなるのは結構だけど、捜査能力のない俺らが闇雲になったところで、何か成し遂げられることがあるとは思えない」
「じゃあ、どうすんだよ。篠塚の予感が当たったら、篠塚、殺されるかもしれないんだぞ。このままそうなるのを傍観してろっていうのかよ」
「そうは言ってない。俺だってどうにかしたいって思ってる。篠塚のことなんかどうでもよかったら、喰い殺したいのをわざわざ我慢するようなことなんかしないし、向こうが望んでるなら、それを理由にしてさっさと喰い殺してる」
「喰い殺してるって、なんだよ。喰い殺したくはないんじゃないのかよ。自分にとってどうでもいい人だったら、瞬は我慢せずに喰うのかよ。それじゃあ、殺人鬼と一緒じゃねぇかよ」
「喰いたければ喰えって言ったのは紘だろ。俺が喰い殺しそうになったら、紘が止めてくれるんだろ。こっちは血肉を喰わないとずっと飢餓状態のようなものなんだよ。篠塚のことも、喰っていいなら喰いたい。喰えるものなら喰いたい。喰いたくて喰いたくてたまらない。俺は篠塚を喰い殺したい。喰い殺したいくらい、喰いたいんだよ。フォークじゃない紘には、一生理解できないだろ」
吐き捨てるように言い切ってしまってから、ハッとなった。沈黙が広がり、紘の返答がなくなり、全身の熱がゆっくりと冷えていくのを感じる。吐いた言葉を反芻した。言ってはいけないことを言ってしまった。こんな無意味な口論をするつもりではなかった。鬱憤を晴らすように感情的になるつもりもなかった。どうすれば篠塚の不安を消せるのか、篠塚が殺されずに済むのか、という話だったのに、俺がその動線を変えてしまった。