甘美な果実
「最悪」
喉を詰まらせながら呟いた言葉が、驚くほどに震えていた。俺が篠塚を喰ってしまってから、喰おうとしてしまってから、その味を覚えてしまってから、何もかもが上手くいっていない気分に陥り、訳も分からずに泣きたくなった。誰かのせいにしたい。誰のせいでもないのに、誰かのせいにしたい。
孤独を感じる時、隣にいてほしい人との間に亀裂を入れてしまったことが、自分の首をきつく絞めていた。一生大事にしたい友人だった。紘も。篠塚も。それを同時に失くしてしまったような喪失感に侵され、目の前が暗くなっていくようだった。まだ完全には回復していないメンタルが、全て終わってしまったような気分にさせていた。悪い結果だけが、俺の身に残っていた。
些細な出来事のはずなのに、ちょっとした意見の食い違いで背を向け合うような形になってしまっただけなのに、それが辛く、痛く、心が抉られる。なぜか分からないまま溢れてくる涙を隠すように、押し戻すように上を向いて。服の袖で目元を覆った。自分がこんなに脆弱な人間だなんて思わなかった。
良好な関係だったはずのそれに僅かな罅が入り、一旦距離を置くように紘が出て行ってから、何の音沙汰もないまま何時間も経過した。連絡も来ず、連絡もせず、紘が一人で何をするつもりでいるのか、どうするつもりでいるのか、どのような策を練っているのか、俺は何も分からなかった。自分が何をすればいいのかも、何をすれば紘との仲を修復できるのかも。何も。分からない。頭が働かない。正解を導き出せない。
何度もスマホを手にした。紘にメッセージを送信しようと、通話をしようと、考えた。指がそれをする直前まで動いた。でも、できなかった。それ以上は、どんなに頑張っても、俺の指は動かなかった。
喉を詰まらせながら呟いた言葉が、驚くほどに震えていた。俺が篠塚を喰ってしまってから、喰おうとしてしまってから、その味を覚えてしまってから、何もかもが上手くいっていない気分に陥り、訳も分からずに泣きたくなった。誰かのせいにしたい。誰のせいでもないのに、誰かのせいにしたい。
孤独を感じる時、隣にいてほしい人との間に亀裂を入れてしまったことが、自分の首をきつく絞めていた。一生大事にしたい友人だった。紘も。篠塚も。それを同時に失くしてしまったような喪失感に侵され、目の前が暗くなっていくようだった。まだ完全には回復していないメンタルが、全て終わってしまったような気分にさせていた。悪い結果だけが、俺の身に残っていた。
些細な出来事のはずなのに、ちょっとした意見の食い違いで背を向け合うような形になってしまっただけなのに、それが辛く、痛く、心が抉られる。なぜか分からないまま溢れてくる涙を隠すように、押し戻すように上を向いて。服の袖で目元を覆った。自分がこんなに脆弱な人間だなんて思わなかった。
良好な関係だったはずのそれに僅かな罅が入り、一旦距離を置くように紘が出て行ってから、何の音沙汰もないまま何時間も経過した。連絡も来ず、連絡もせず、紘が一人で何をするつもりでいるのか、どうするつもりでいるのか、どのような策を練っているのか、俺は何も分からなかった。自分が何をすればいいのかも、何をすれば紘との仲を修復できるのかも。何も。分からない。頭が働かない。正解を導き出せない。
何度もスマホを手にした。紘にメッセージを送信しようと、通話をしようと、考えた。指がそれをする直前まで動いた。でも、できなかった。それ以上は、どんなに頑張っても、俺の指は動かなかった。