甘美な果実
紘を除いて、無事な人がいない。紘は。紘は。篠塚のことは自分でどうにかすると言っていた紘は。彼まで犠牲になっていたら。俺は。俺は本当に。生きていけない。生きていける気がしない。死にたい。死にたい。紘。紘。篠塚が。篠塚が。
涎が、垂れる。それが吐き気によるものではなく、首を切断された篠塚を前にしても尚、萎えることのない食欲によるものであると思ったら、更に、更に、自分の息の根を止めたくなった。死にたくなった。とてつもなく、死にたくなった。殺してほしい。俺を、殺してほしい。
「瞬くん、これ、瞬くんの好物。俺が思う瞬くんの好物。この首筋の痕を、瞬くんの食べた痕だと考えると、瞬くんの好物は首になる。見た感じ、他の部位に同じような痕はなかった。瞬くんがこのケーキに目をつけてたこと、俺は知ってるし、以前、飲食店で食べようとしたことも知ってる。その時は止められて食べられなかったみたいだけど、でも、やっと、ようやく、これを食べることができたのなら、俺は凄く嬉しい。瞬くんを一目見た時から、仲良くなれそう、仲良くなりたいと思ってたんだ。その機会をなかなか見つけられなくて困ってたところに、このケーキの存在に気づいて。次はこれにしようと思った。瞬くんが狙って、瞬くんが食べたケーキを俺も狙うことで、自然なきっかけが作れる。一緒に同じものを食べられる。同じ味を共有できる。俺は瞬くんと仲良くなりたいんだ。今日あったことを話して、盛り上がって、俺が持ってきたもので食事をする。邪魔は絶対に入らない。俺が入らせない。今は俺と瞬くんの二人しかいないから、ゆっくり食べよう。何も我慢しなくていい。遠慮なんかしなくていい。このケーキの首は瞬くんのもの。全部瞬くんにあげるつもりで持ってきた。俺には俺の好物があるし、ちゃんと持ってきてるから心配いらない」
涎が、垂れる。それが吐き気によるものではなく、首を切断された篠塚を前にしても尚、萎えることのない食欲によるものであると思ったら、更に、更に、自分の息の根を止めたくなった。死にたくなった。とてつもなく、死にたくなった。殺してほしい。俺を、殺してほしい。
「瞬くん、これ、瞬くんの好物。俺が思う瞬くんの好物。この首筋の痕を、瞬くんの食べた痕だと考えると、瞬くんの好物は首になる。見た感じ、他の部位に同じような痕はなかった。瞬くんがこのケーキに目をつけてたこと、俺は知ってるし、以前、飲食店で食べようとしたことも知ってる。その時は止められて食べられなかったみたいだけど、でも、やっと、ようやく、これを食べることができたのなら、俺は凄く嬉しい。瞬くんを一目見た時から、仲良くなれそう、仲良くなりたいと思ってたんだ。その機会をなかなか見つけられなくて困ってたところに、このケーキの存在に気づいて。次はこれにしようと思った。瞬くんが狙って、瞬くんが食べたケーキを俺も狙うことで、自然なきっかけが作れる。一緒に同じものを食べられる。同じ味を共有できる。俺は瞬くんと仲良くなりたいんだ。今日あったことを話して、盛り上がって、俺が持ってきたもので食事をする。邪魔は絶対に入らない。俺が入らせない。今は俺と瞬くんの二人しかいないから、ゆっくり食べよう。何も我慢しなくていい。遠慮なんかしなくていい。このケーキの首は瞬くんのもの。全部瞬くんにあげるつもりで持ってきた。俺には俺の好物があるし、ちゃんと持ってきてるから心配いらない」