甘美な果実
舌で転がす丸い塊からは、以前、篠塚が触れた腕を舐めてしまった時に感じた味と似た味がした。フォーク用に作られた飴だった。流石に何か対策をしなければと危機感を覚え、夏休み前くらいから常備するようになり、この飴なしでどのように生活していたのかと過去の自分を不思議に思うくらいには手放せないものとなっていた。それは、こまめに飴を舐めていなければ、体育祭の競技で篠塚に借りられ、篠塚と手を繋いでゴールなどできなかったに違いないと思うほどだった。
自分に余裕がなかった時に、身勝手に拒絶してしまった篠塚には、その数日後という形になってしまったが、素直に謝罪し、頭を下げていた。それまで篠塚は、俺の言葉通りに俺を避け、近づかないように、触れないように、一日中細心の注意を払っている様子で。無駄に緊張させてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
触るな近づくなと言われ、避けざるを得なかった俺に呼び止められ、謝られた篠塚は、最初は驚愕の表情を浮かべた。そのうち怒りを露わにするかもしれない、そうなってもおかしくないと俺は人知れず身構えていたものの、彼は俺の予想に反して安心したように顔を綻ばせたのだった。
これからは近づいても、話し、かけてみても、大丈夫ってことだよね。うん、別に、大丈夫、だけど。良かった、良かった、あの時、自分が先走りすぎたせいで、渕野くんを不快にさせたこと、謝りたかったんだ、ごめん。篠塚が、謝るようなことは、何も。なくないよ、なくない。ないだろ。なくない、普通に考えて、あまり接点のない人にいきなり触られたら、誰だってびっくりするし不愉快になるよね、だから、渕野くんは悪くないよ。
渕野くんと、仲良くなりたくて、距離を縮めたくて、それで勝手に焦った俺が、順序を間違えた、だけだから。言いながら、篠塚の視線は落ちていき、そして、何言ってるんだろう、と彼は我に帰ったように頬を赤く染めてはにかんだ。上手くリアクションが取れないでいる内に話を終わらせた篠塚は、俺に興味を持ってもらえるように頑張るから、と何やら意気込んで逃げるように去っていった。
自分に余裕がなかった時に、身勝手に拒絶してしまった篠塚には、その数日後という形になってしまったが、素直に謝罪し、頭を下げていた。それまで篠塚は、俺の言葉通りに俺を避け、近づかないように、触れないように、一日中細心の注意を払っている様子で。無駄に緊張させてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
触るな近づくなと言われ、避けざるを得なかった俺に呼び止められ、謝られた篠塚は、最初は驚愕の表情を浮かべた。そのうち怒りを露わにするかもしれない、そうなってもおかしくないと俺は人知れず身構えていたものの、彼は俺の予想に反して安心したように顔を綻ばせたのだった。
これからは近づいても、話し、かけてみても、大丈夫ってことだよね。うん、別に、大丈夫、だけど。良かった、良かった、あの時、自分が先走りすぎたせいで、渕野くんを不快にさせたこと、謝りたかったんだ、ごめん。篠塚が、謝るようなことは、何も。なくないよ、なくない。ないだろ。なくない、普通に考えて、あまり接点のない人にいきなり触られたら、誰だってびっくりするし不愉快になるよね、だから、渕野くんは悪くないよ。
渕野くんと、仲良くなりたくて、距離を縮めたくて、それで勝手に焦った俺が、順序を間違えた、だけだから。言いながら、篠塚の視線は落ちていき、そして、何言ってるんだろう、と彼は我に帰ったように頬を赤く染めてはにかんだ。上手くリアクションが取れないでいる内に話を終わらせた篠塚は、俺に興味を持ってもらえるように頑張るから、と何やら意気込んで逃げるように去っていった。