極上ドクターは臆病な彼女に永遠の愛を誓う
病院の最寄駅のそばのイタリアンダイニングへ入ると、店員に「いらっしゃいませ」と声をかけられた。
息を切らしながら「待ち合わせを……」と言いかけたところで、ソファ席の父と目が合った。
父は微笑んで右手を上げる。
それを見ていた店員に促され、ソファ席へと向かった。

「ごめんね、遅くなっちゃった」
「いや、もっと遅い時間に待ち合わせればよかったか?」
「ううん、だって今日日帰りなんでしょ?」
「ああ。明日も仕事だからな」

ソファ席に座り、カラカラに乾いた喉にお冷を一口流し込む。
19時5分。ベビーを看たり、篠原先生に見惚れていたりしたら結局遅れてしまった。
父に会うのは正月に帰省して以来5ヶ月ぶりだというのに、薄情な娘で申し訳ない。

「ジー…なんとかだったか?赤ちゃんが入院する科だったよな」
「GCUね。お父さんってば、何回言っても覚えられないのよね」
「お前が生まれたときは何のトラブルもなく退院から、そういう科があることも知らなかったからなあ」

父は恥ずかしそうに頰をかき、それからなぜか咳払いをして軽く身を乗り出す。

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