極上ドクターは臆病な彼女に永遠の愛を誓う

「それで、どうなんだ？その…結婚とか」
「へ？」
「お前もほら、いい歳だろう？結婚とか、子どもとか、考えないのか？」

言いづらそうにしながら、父がこちらの様子を窺う目を向ける。
父がこんなことを言うのは初めてで、困惑で言葉が出てこない。
父は『女性だって自立してひとりでも生きていけるようにしなきゃいけない時代だ』という考えを持っていて、私が大学で看護を学びたいと言った時は大賛成してくれた。
だから私は、独りで生きていっていい(・・・・・・・・・・・)のだと思っていた。
実際、実家に帰省するときも、普段電話で話すときも、結婚どころか恋人がいるかどうかすら聞かれたことがない。
それなのに、なんで……

「急にどうしたの？お父さん、今までそんなこと言ったことなかったのに」
「いや、その、な」

から笑いで言葉を濁す父を見て、嫌な予感が走る。

「なにかあったの？」

恐る恐る訊ねると、父は少しの間を置いてため息を吐いた。

「実は、癌が見つかってな」
「癌？」

さっと血の気が引き、動揺してテーブルのお冷を倒しそうになった。

「部位は？進行はどの程度なの？治るんだよね？」
「おい、落ち着け」

身を乗り出して矢継ぎ早に問う私に、父が焦ったように手を胸の前で上下する。