極上ドクターは臆病な彼女に永遠の愛を誓う
「ステージ1の大腸癌でな。たまたま会社の健診で見つかったんだ。内視鏡治療を受けたから、あとは経過観察でいいそうだ」
「内視鏡……癌細胞を切除したってことよね?それはいつ受けたの?」
「一ヶ月くらい前だ」

ため息と共に力が抜け、ソファに座り込む。
どうやら私は動揺のあまり、身を乗り出すどころか立ち上がってしまっていたらしい。

大腸がんで内視鏡治療で済んだということは、癌細胞が粘膜で留まっていたということだ。
切除した上で経過観察と言われているのなら、病理検査にも引っかからなかったのだろう。
看護師といえど消化器内科に詳しくはないけれど、経過観察イコール完治という意味ではないのは確かだ。
手放しで安心できるものじゃない。
考えているうちに、ふつふつと不満が湧いてきた。

「どうしてもっと早く言ってくれなかったの?治療が一ヶ月前だったのなら、癌を宣告されたのはもっと前でしょう?」
「そうなんだが、余計な心配をかけたくなくて」
「あとから聞かされるほうが心配だよ」
「すまないな。黙ってて悪かった」

頭が熱くなって口調が強くなった私に、困ったように父が小さく口角を上げる。
< 7 / 31 >

この作品をシェア

pagetop