白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「子供がいるんだっ!」
「ここのチャペル、いいよね~。私も挙げるならここがいいなぁ」
「その前に、澪は相手探さないとでしょ」
「あ~もうっ、せっかく幸せに浸ってたのに~」
私、黒瀬 夕映は久々の完全休日を貰い、親友の真子の挙式に参列し、中学時代からの友人二人(増田 澪 と滝川 史恵)と披露宴が行われる会場へと敷地内を移動している。
都内でもウェディングで群を抜いている高級ホテル。
バリエーション豊かなウェディングプランが有名で、連日多くのカップルが式を挙げる。
「あの新郎新婦も、今日お式なんだね」
「私にもあぁいう幸せな瞬間があったはずなんだけどなぁ」
「何寝ぼけたこと言ってんのよ」
チャペルに向かうためのカートへと案内されている新郎新婦を、既に人妻である史恵が羨ましそうに眺めていた、その時。
「えっ」
「あ…」
「キャァッ!」
三十メートルほど離れた場所で、突然新婦が倒れた。
「ごめんっ、ちょっと行って来るっ!」
「え、あっ、んんっ!」
救急医である夕映は履き慣れないハイヒールで新婦の元へと駆け寄る。
「すみません、すみませんっ」
集まり出す人たちを掻き分け、新郎新婦の元に辿り着いた、次の瞬間。
「ッ?!……将司?」
「……夕映?……夕映っ!」
倒れている新婦の傍らにいたのは、紛れもなく自分の彼氏だった。
どうしてここにいるのだろう?
何故、そんな恰好をしているの?
隣りにいるこの人は誰?
「頼む、助けてくれっ」
ギャラリーとばかりに集まる人の前で、いきなり土下座されてしまった。