白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

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「えっ、どういうことですか？！」

講習を無事に終えた夕映は、“不在着信 五件”という表示を目にして、すぐさま折り返し電話を入れた。
その相手は、不動産会社。
今住んでいるマンションの管理会社だ。

「すみません、話が見えないんですけど、もう一度説明して貰えますか？」

動悸のような鼓動を感じながら、スマホのスピーカーに耳を澄ませていると。

「お住いのマンションですが、二日前が退去日となっておりまして、鍵が未返却のままなので確認のご連絡を…」

どういうこと？
退去日って何？
それも、二日前って…。
えっ、もしかして、将司のやつ、勝手に退去手続きを済ませたってこと？

ありとあらゆる情報が脳内を錯綜する。

「あの、すみません。部屋の契約って、更新が無理でも、再契約って出来ますよね？」
「申し訳ありません。既に次の入居者が決定しておりまして、一度クリーニング作業をしなければならないので」
「……」

呆れて言葉も出て来ない。
これって、今すぐ出て行けってことじゃない。

そう言えば、マンションを借りる時だって彼が全部してくれたっけ。
銀行マンの彼はこういうことは得意だからと、仕事に追われていた私は、彼に丸投げしたんだった。

「では、今週末までにご返却をお願いします」
「……はい」

ツーツーッと無機質な音が耳に届く。
夕映は全身の力が抜け落ちるように、その場にへたり込んだ。

『今週末』って、明後日じゃない。
今日は講習で半分休みのようなものだけれど、明日明後日は仕事なのに。
私にどうしろと？

「またお会いしましたね」
「……へ？」