白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「最後のお抹茶も、美味しかったですね」
「たまにはこういう趣向もいいよな」
最後にフルーツと葛切り、そしてお抹茶を堪能した夕映と采人。
店を後にし、少し離れた場所にあるコインパーキングへと向かう。
日曜日の二十時少し前の新宿駅前。
混雑ピーク時ではないが、やはり新宿。
うだるような暑さと人混みの多さにくらりと眩暈がしそうなほどだ。
「明日は何時出勤?」
「日勤なので九時です。神坂さんは?」
「あやと」
「……采人さんは?」
「俺は八時半出勤」
「いつもですか?」
「ん、夜勤じゃない限り、出勤日は八時半。とはいえ、大抵は八時前には出勤してるけど」
「ですよね。なんだかんだと、ギリギリってわけにはいかないですよね」
「だな」
『医師』という目線だから、必然的に会話の内容は仕事に関することが多い。
けれど、それが苦ではないのは何でだろう?
同期の仲間と食事したり、講習の際に知り合いの医師と会話しても気を遣うのに。
どうしてだろう?
彼と会話しても、気疲れしないのは…。
「ピンポイントな質問してもいいですか?」
「フフッ、……何?」
真面目な顔で質問したものだから、ほんの少しだけ驚いた顔をした彼。
だけど、その後すぐにいつもの優しい微笑みを浮かべた。
「あらゆる分野の最新機種が揃っているというのは本当ですか?」
「何……うちの病院に興味が湧いたの?」
「興味が湧いたというか、本当に現実問題としてあり得るのかな?と常々思っていて」
一台数千万から数億するような医療器材が、そんな頻繁に新調されるのだろうか?
それも、様々な科がある総合病院となれば、恐ろしい額の予算が組み込まれているはず。
夕映は左隣りを歩く采人を興味津々で見上げた、その時。
「んっ?!……っ」