白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

警察官に状況を詳しく伝えた。
それと同時に約三週間ほど前からストーカー被害を受けていたことと、弁護士を通して示談交渉中だったことも正直に伝える。
孫と秘書から報告を受けていることを説明する院長夫人。
お父様はこの時、初めて知ったようで驚愕の表情を浮かべた。

傷害事件として捜査するためだろう。
聞き取りの情報から、すぐさま無線で周辺の防犯カメラの映像確認と一般市民の安全確保が命じられ、各交番に情報が引き継がれる。



「お義母さん、あなた」
「終わったのか?」
「えぇ、無事に終わりました」
「そうか。……黒瀬さんと言ったかな?采人の手術が終わったようだ」
「……はい」

お母様が呼びに来て下さり、お父様は一足先に手術室の方へと戻って行った。
お祖母様である院長夫人は、外で待機していた秘書を呼び、警察に更に詳しい事情を説明している。

手術が無事に終わったと聞き、胸を撫で下ろす。
緊張の糸が途切れたかのように、足下から力なく崩れ落ちた。

「やだっ、夕映さん!……しっかりして、大丈夫?」
「……はい。彼が無事で本当によかったですっ」
「気が気ではなかったわよね。辛い目に遭わせてごめんなさいね」
「っ……、謝らなければならないのは私の方です。大事なお孫さんに大怪我までさせてしまって…。本当に申し訳ありませんっ」
「夕映さんが謝ることではないわ。悪いのは怪我を負わせた人でしょ?もう少し踏み込んで弁護士に対応させればよかったわ。後悔先に立たずね」

苦笑する院長夫人を滲む視界で必死に捉える。

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