白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
意識が戻り、麻酔が切れた采人は、神坂総合病院へと転院した。
もちろん、VIP専用の病棟の個室へと。
夕映は会長夫人が手配して下さった車で、住んでいるマンションへと送り届けられた。
血だらけのシャツ姿で病院内を歩き廻れるわけもなく、お払い箱状態。
神坂総合病院の救急車で転送される際に一瞬チラッと見ただけ。
会話するでもなく、視線が合うわけもなく。
遠目で彼の無事を確認しただけ。
一目見て安心したいなどと、言える立場にない。
家に着いた夕映は、玄関にへたり込んだ。
元はと言えば、自分に起きたことなのに。
あのストーカー男の捻じ曲がった感情が、彼に向けられてしまったことに憤る。
行き場のない悔しさと申し訳なさに駆られた。
無事だったからよかったものの、彼に何かあったらと思うと怖くて…。
ぽたぽたと涙が零れ落ちる。
「んっ……ぅっ…」
嗚咽に似た、声にならない声が漏れ出した。
泣いてもどうにもならない。
着替えて、彼に会いに行かなきゃ…。
夕映は急いでシャワーを浴び、神坂総合病院へと向かうことにした。
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「すみませんっ、一目でいいんです。彼に会わせて貰えませんか?」
「夕映さん、明日は仕事があるんじゃないの?今日はもう遅いから、明日仕事が終わったら来なさい」
「体力だけは自信があるので、一日二日寝なくても大丈夫です!お願いしますっ、会わせて下さい」
夕映は深々と何度も頭を下げる。
迷惑をかけていることは重々承知のうえ。
それでも、自分のせいで負傷した彼に会わずにはいられない。
「さっきまで起きてたんだけど、今また寝てしまって…。いつ起きるか分からないわよ?」
「平気です。待たせて貰っても宜しいでしょうか?」
「……そこまで言うなら」
「ありがとうございますっ!」