白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
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「おかえり」
「……体の具合はどうですか?」
「『ただいま』くらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「っ……ただいま」
二十二時過ぎに仕事を終え帰宅すると、何故かキッチンに彼の姿が。
自分の家でもないし、彼と一緒に住んでいるわけでもないから、正確には『ただいま』というのもおかしな話だけれど。
何か料理を作っているようだ。
「何を作ってるんですか?」
「煮込みうどん」
「うどん?」
「黒瀬家の手打ちうどんが冷凍庫にあったから」
「あぁ……」
実家から送り込まれて来たうどんは一度には食べきらないし、生うどんだからカビやすい。
だから、残りのうどんは小分けにして冷凍するのが鉄則。
術後間もない彼にとって、消化のいいうどんは最適だ。
「手伝いますよ」
「もう出来上がるよ」
食器戸棚から丼を二つ取り出す彼。
私の分も作ってくれていることに胸の奥がじんわり熱くなる。
五年も付き合っていたのに、元彼に料理を作って貰ったことなんてあったかな…。
風邪で寝込んだ時だって、レトルトのお粥をチンしただけだったもの。
料理なんて一切しなさそうに見えるのに、手際のよさから作り慣れているのが見て取れる。
「美味しそうな匂い」
「一人暮らし歴が長いからね。簡単なものなら結構作れるよ」
「そうなんですか?」
「何でそんなに驚くの。毎日出来合いの物とか外食ばかりだったら成人病になるだろ。不摂生してる医者になんて、誰も診て欲しいとは思わないよ」
前にも同じようなことを聞いたっけ。
医師としての自覚はしっかりと持っている人だ。
「おかえり」
「……体の具合はどうですか?」
「『ただいま』くらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「っ……ただいま」
二十二時過ぎに仕事を終え帰宅すると、何故かキッチンに彼の姿が。
自分の家でもないし、彼と一緒に住んでいるわけでもないから、正確には『ただいま』というのもおかしな話だけれど。
何か料理を作っているようだ。
「何を作ってるんですか?」
「煮込みうどん」
「うどん?」
「黒瀬家の手打ちうどんが冷凍庫にあったから」
「あぁ……」
実家から送り込まれて来たうどんは一度には食べきらないし、生うどんだからカビやすい。
だから、残りのうどんは小分けにして冷凍するのが鉄則。
術後間もない彼にとって、消化のいいうどんは最適だ。
「手伝いますよ」
「もう出来上がるよ」
食器戸棚から丼を二つ取り出す彼。
私の分も作ってくれていることに胸の奥がじんわり熱くなる。
五年も付き合っていたのに、元彼に料理を作って貰ったことなんてあったかな…。
風邪で寝込んだ時だって、レトルトのお粥をチンしただけだったもの。
料理なんて一切しなさそうに見えるのに、手際のよさから作り慣れているのが見て取れる。
「美味しそうな匂い」
「一人暮らし歴が長いからね。簡単なものなら結構作れるよ」
「そうなんですか?」
「何でそんなに驚くの。毎日出来合いの物とか外食ばかりだったら成人病になるだろ。不摂生してる医者になんて、誰も診て欲しいとは思わないよ」
前にも同じようなことを聞いたっけ。
医師としての自覚はしっかりと持っている人だ。