白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
「羅菜が俺の婚約者だよ」
「……え?」
「と言っても、今日までだけど」
「え?……えっ、どういうこと?」
「オジサン、説明してないの?」
「大体のことは話してあるつもりだけど」
「今現在彼の婚約者だけど、今日をもって婚約を解消するの」
「へ?」
「結婚したい人ができた時点で婚約は解消することになってて、彼があなたと結婚したいから解消したいって言って来たんだけど」
「……」
婚約解消に関する話は聞いている。
その相手が十七歳の高校生だということも聞いていたけれど。
二カ月ほど前にウェディングで有名なホテルで見た女性と同一人物とは到底思えない。
まったくの別人だ。
あの時は清楚なお嬢様スタイルだったし、高校生と言っても、彼にこういう感じに話しかけているとは思いもしなかった。
「で、今日は慰謝料代わりに、ここの支払いをして貰うために来て貰ってるの」
「……」
あぁ、なるほど。
お財布代わりってやつね。
そりゃあ、お金持ちだから、これくらいの会計なんて問題ないんだろうけど。
既にテーブルの上には置ききらないほどの料理が並んでるのに、更に追加注文してる。
それも、料理とは言えないようなカオスメニューの他にデザートまで。
「失礼致します。やきそバニランでございます」
「ッ?!!」
平皿に焼きそばが盛られていて、なんとその上にバニラアイスが……。
「じゃあ、夕映さん、これヨロシクね☆」
「え……」
絶句とはこういう時の状態を示すのだろう。
状況的に拒否ることもできず、かと言って喜んで頂くという気にもなれない。
「俺も手伝う」
いやいや、全部食べて下さい。
見ただけで胸やけしそう。
空腹だったはずなのに、胃袋が完全拒否してる。
お腹をぱかっと開いて、中に放り込んで貰いたいくらいだ。