白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです
(采人視点)

羅菜との婚約を解消するために、例のあの店へと夕映を連れて行った。
当初の予定では一時間ほど付き合えばOKという話だったのに、『勿体ないから』と結局数人分の料理を平らげた夕映。
腹八分目で止めとけばいいものを、羅菜のゴリ押しに流され倒れる寸前まで食べていた。

マンションに連れ帰ったはいいが、話ができるほど余裕はないようで。
苦しそうな表情でベッドに横たわっている。

ブラウスのボタンを外そうが、カプリパンツのベルトを緩めようが、全く抵抗することさえない。
これはこれで興が冷めるというもの。
恥ずかしがったり照れる夕映に手を出すのが楽しみなのに。

疲労感からか、夕映がうとうととし始めた。
寝入ったら打っておいてやるか。

予め用意しておいた輸液を夕映に施す。
明日は遅番だと言っていたから、ぐっすり眠れば少しは楽になるはず。

彼女の頬を撫でながら、羅菜とのやり取りを思い出す。

俺の婚約者だと知った夕映は、驚きつつも状況を把握するのに必死だった。
俺に対する羅菜の態度で、俺が伝えていた『俺と結婚する気はない』という言葉を信じたようで、途中からは手のかかる妹的な感じで会話も弾んだほど。

『可愛い女装男子が好き』という性癖。
ただ単に女装している男子が好きというわけではなく、女装している上でとびきり可愛い子が好きだという羅菜。
俗にいう、ニューハーフが好きというのとも少し違うようで、体は男性で心が女性という男子が好物という……極めてピンポイントな好みの羅菜を一生懸命理解しようとしていた。

医術の前では、男も女も関係ない。
恐らく、夕映の中では底辺に医師理論に基づく概念が根付いているからだろう。

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